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2020年4月改正 居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の制限
2020.05.19会計税務
【概要】
2020年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入について、仕入税額控除の適用を認めないこととされました。
※居住用賃貸建物とは、「住宅の貸付の用に供しないことが明らか建物」以外の建物をいいます(税抜価格が1,000万以上のもの)。また住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物とは、例えば全て店舗であるような物件を言います。
※ただし、経過措置として2020年3月31日までに締結した契約については、この規定の適用は受けません。
【趣旨】
住宅の賃料は政策的な理由より、消費税がかからない制度(非課税)となっております。そのため、住宅を購入するために支払った消費税については、「非課税売上に関連する」課税仕入としてカテゴリーされ、仕入税額控除が使えないものとして整理されております。
しかし、事業者の仕入税額の計算のやり方によっては、仕入税額控除が使えるようにする方法が存在しておりました。具体的には「課税売上が5億円未満 かつ 課税売上割合が95%以上」であれば、カテゴリーに関係なく、すべての課税仕入を控除できる制度設計となっています。
【事例】
通常通り、居住用賃貸建物を購入して、賃貸業を営んでいる場合は、特段問題は生じません。
通常例)物件2億(消費税2千万)にて購入し、居住者から賃貸収入年間1千万(非課税)を得ている事業者の場合、売上はすべて非課税売上であるため、課税売上割合は0%となり、物件に係る消費税については仕入税額控除できず、消費税の納付および還付は発生しません。
一方で、5億円95%ルールを利用して還付を取る事例が見受けられました。例えば、同タイミングであれば価格変動が生じない金地銀などの取引を利用する方法です。
潜脱例)前述に加えて、金を3億(消費税3千万)で購入し、同タイミングで3億(消費税3千万)で売却する取引を行った場合、課税売上割合は 金3億÷(金3億+賃料1千万)=96.7%と、95%以上となり課税仕入に係る消費税については、全額仕入税額控除の対象となります。
その場合、預かった消費税3千万から支払った消費税5千万(金3千万+居住用賃貸建物購入2千万)を控除し、2千万が還付されることになります。
このように趣旨とは異なる形での還付事例が散見されたため今回の改正がなされ、居住用賃貸建物を取得した場合の仕入税額控除制度の適正化が図られました。
【改正による影響】
一方で、事業用物件と居住用物件のいずれの賃貸も行っている等、他に事業より課税売上が生じている事業者についても、居住用賃貸建物に係る消費税について仕入税額控除の適用ができなくなるため、留意が必要となります。
【実務上の処理】
・居住用賃貸建物の仕入時点では支払った消費税について仕入税額控除を適用できない
・仕入から3年以内に住宅以外の貸付けに供した場合は、一定額を仕入税額控除に加算可能
・仕入から3年以内に譲渡した場合は、一定額を仕入税額控除に加算可能
詳細はこちらよりご確認ください。[国税庁]消費税法改正のお知らせ